カナダSV

様々な顔を持つ街、トロント―都心とエスニックタウン―

深田志緒莉
人間文化課程 3年

トロントへ旅立つ前、カナダは様々な差異を認める国だと勉強していたため、そこはさぞや全体的に様々な民族の文化が融合している都市なのだろうと予想していた。しかし実際にトロントの地に降り立つとかならずしもそういうわけではなかった。様々な文化が融け合うというよりも、近代的な都心部と個々に散在するエスニックタウンとがモザイク模様をなしているのだ。

同じトロントにあるとはいえ、都心部と、それぞれのエスニックタウンとでは住んでいる人も文化も違うため、全く別の顔を見せている。そんなトロントの様々な顔を持つところに興味を抱いて、両者を比較してみようと考えた。

都心のビジネス街には近代的な高層ビルが立ち並び、きれいな教会がその中にときおり混じって建っている。住宅街に入ると、一転してヨーロッパの面影を感じる褐色の煉瓦でできた装飾性の高い家々が立ち並ぶ。

カナダSV2014: カナダSV2014:

とはいえここには実に多様な民族がいた。しかしかれらは各々の違いを気にしたり、強調する風情ではなかった。人々はみな親切で礼儀正しく、違った文化を持つ人々を受け入れる体制が整っていると感じた。

次に、エスニックタウンについてである。チャイナタウン、コリアンタウン、グリークタウン、リトル・イタリー、キャベッジタウンなど多くある。都心部とは違い、母国語で看板が書かれていたり話されていたりと国の色が大いに出ている。飲食店も主にその国々の料理を扱うものが多い。
チャイナタウンのスーパーはダウンタウンにあるようなスーパーとは扱っているものが少し違い、干した魚介類などもあってにおいが強い。肉類は上品にパック詰めされたりはせずに、屠殺したままかのような具合で店頭に並ぶ。民族ごとにその出自がおおっぴらに示されるようなのだ。

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カナダは、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まる国であるため、人々はその自分の出自のみを誇りに思い、自分はカナダ人であるというアイデンティティはあまり持たないのかとも考えた。しかしトロントではカナダのシンボル、メープルのマークをつけた防寒具を中心とするグッズが至る所で販売されていて、それを着用している人も多く存在した。メープルのシンボルマークや、褐色の煉瓦でできた建物を見て感じた「カナダらしさ」というものはあり、カナダ都市部にいる人々はそれぞれのバックグラウンドを大事にしつつもカナダ人としての意識も持っているのだろう。

同時に、トロントでは様々なバックグラウンドを持つ人が住んでいて、さらに様々な形でそれを大事にして生きている。トロントの人々は近くにあるさまざまなエスニックタウンを訪れて、気軽に自分とは違う文化を知ることができる。

トロントは、さまざまな顔を持つことによって、多くの可能性を多様な人々に提示している街なのである。

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