齊藤先生からの報告より「ロンドンでは移民系による人口増加が問題となっている。それによる家の建造・インフラ整備が急務となっている」と伺う。ロンドンにおける都市問題の詳細を知るべく、文献の輪読をまずおこなった。そのひとつが、2004年に大ロンドン市が発表した「ロンドンプラン」である。上述のような状態にある世界都市ロンドンの多様な問題を解決すべく、広域的な都市の総合政策とそれにそった一貫した政策体系の方針としてこのプランは発表された。このような文献を通して、ロンドンが抱える多様な問題の概観を学んだ。ロンドンのより詳細な実情はLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)でアラン・メイス先生の講義で伺うことができると知ったうえでLSEに訪問することになる。
LSEの校舎
LSEで我々が伺ったロンドンの都市問題について端的にまとめると以下のようになる。テーマは移民の流入による住環境問題である。
講義は以上のことを、ビジュアル資料を多く用いてメイス先生に説明していただいた。
かつて造船所があった再開発地域
また、ロンドンと同じく世界的な大都市である、東京や上海とロンドンの比較もあった。ロンドンと東京の大きな違いとして紹介されたのは「移民の有無」である。日本国内では移民受け入れに関して近年議論が活発になっているが、イギリスでは以前から受け入れていた。現在では白人のイギリス人は、ロンドンの人口の45%にとどまり、残り35%はイギリス外からの移民、25%は非ヨーロッパ圏からの移民となっている。そして、ロンドンの人口増加は人の流入だけに依らず、白人イギリス人の低い出生率を移民がカバーすることによっても引き起こされていることも説明された。
東京と上海のようなアジアの大都市とロンドンとの大きな違いは、人口密度である。これまで、ロンドン内における人口増加について述べたが、ロンドンには15世紀以前に建てられた住居もまだ多く残っているため、高層の建築物はそんなに多くない。そのため、香港や上海、東京よりも人口密度は小さくなるのである。
以上のことを学んだ上で講義室を離れ、劣悪な工業地帯の再開発によって新しいまちと変化しつつあるキングスクロスや、移民が多く住むイースト・ロンドンなどを後日フィールドワークとして訪れることによって、全身を使ってロンドンの都市問題に触れることになる。