イギリスSV

ロンドンの都市問題

西本篤史
人間文化課程 4年

野元翔平
人間文化課程 3年

齊藤先生からの報告より「ロンドンでは移民系による人口増加が問題となっている。それによる家の建造・インフラ整備が急務となっている」と伺う。ロンドンにおける都市問題の詳細を知るべく、文献の輪読をまずおこなった。そのひとつが、2004年に大ロンドン市が発表した「ロンドンプラン」である。上述のような状態にある世界都市ロンドンの多様な問題を解決すべく、広域的な都市の総合政策とそれにそった一貫した政策体系の方針としてこのプランは発表された。このような文献を通して、ロンドンが抱える多様な問題の概観を学んだ。ロンドンのより詳細な実情はLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)でアラン・メイス先生の講義で伺うことができると知ったうえでLSEに訪問することになる。

イギリスSV2014:LSEの校舎

LSEの校舎

LSEで我々が伺ったロンドンの都市問題について端的にまとめると以下のようになる。テーマは移民の流入による住環境問題である。

  • 大半が移民系による人口増加によって1年に5〜6万ほどの住宅が必要になっている。
  • しかしその住宅地をロンドンの中心地に建設せざるを得ない状況である。
    (ロンドン郊外の地域ごとによって住宅を増やすか否かの判断を地域の長が握っているため、郊外地域の住民は静かな暮らしを望み住宅建設を認めない)1980年代から今まで、人口増加の一途だが、ロンドンそのもののエリアは変わらないため、住宅を建てられるエリアは減少していく。
  • そのため、かつての造船所を取り壊して再開発を急速におこなっている状況であるがインフラ整備が追い付いていない。また、家の価格も上昇していくため、低賃金で働く人々は住む場所の確保も難しくなっている。
  • 人口増加という社会的現象、住宅を建てるということによる建設業界の経済的・政治的利害が絡んでいるため、この問題を解消することは困難を極める。
    ※ イギリス人古来の「古いものに価値があり、新しいものにあまり価値を見出さない」という価値観も影響している。

講義は以上のことを、ビジュアル資料を多く用いてメイス先生に説明していただいた。

イギリスSV2014:かつて造船所があった再開発地域

かつて造船所があった再開発地域

また、ロンドンと同じく世界的な大都市である、東京や上海とロンドンの比較もあった。ロンドンと東京の大きな違いとして紹介されたのは「移民の有無」である。日本国内では移民受け入れに関して近年議論が活発になっているが、イギリスでは以前から受け入れていた。現在では白人のイギリス人は、ロンドンの人口の45%にとどまり、残り35%はイギリス外からの移民、25%は非ヨーロッパ圏からの移民となっている。そして、ロンドンの人口増加は人の流入だけに依らず、白人イギリス人の低い出生率を移民がカバーすることによっても引き起こされていることも説明された。

東京と上海のようなアジアの大都市とロンドンとの大きな違いは、人口密度である。これまで、ロンドン内における人口増加について述べたが、ロンドンには15世紀以前に建てられた住居もまだ多く残っているため、高層の建築物はそんなに多くない。そのため、香港や上海、東京よりも人口密度は小さくなるのである。

以上のことを学んだ上で講義室を離れ、劣悪な工業地帯の再開発によって新しいまちと変化しつつあるキングスクロスや、移民が多く住むイースト・ロンドンなどを後日フィールドワークとして訪れることによって、全身を使ってロンドンの都市問題に触れることになる。