ロンドン北西部に位置するハムテッドは、セントラル・ロンドンから地下鉄で約20分のところにある郊外の高級住宅地である。この住宅地は、R・アンウィンによって20世紀初頭に計画され、社会改良家であるH・バーネットによってこの地の住宅は手がけられた。バーネットは「理想の住宅地」を思い描き、“労働者階級のための田園郊外、だれでもが住める階級混在社会の実現”を理想としていた。そのため、ハムステッドでは様々なタイプの住宅(戸建住宅、二戸建住宅、連続建て住宅、労働者階級の共同住宅など)が建設される。しかし、第一次世界大戦前後よりハムステッドは拡張され、開発が進み、次第に中・上階級向けの分譲住宅地と化していった。
2月15日(日)の昼時、齊藤麻人先生の引率のもと、地下鉄でハムステッドに向かった。駅を降り視界にすぐ飛び込んできたのが、昔ながらの住宅街であり、建物の造りや色に統一感があって印象的であった。
駅を出て見える風景
その日の天気は曇りのち晴れで、雨の多いイギリスにしては珍しく、フィールドワーク日和であった。まず道を歩いて気づくことは、路地には人通りが少なく、たまにすれ違う程度であることだった。加えて、停まっている車や、走行中の車に注目すると、ジャガーやBMWなどの高級車が多く見受けられた。そして、広い路地には立派な街路樹が多く植えられており、新緑の季節には緑が生い茂って安らぎの空間となるだろう。
イギリスの住宅の中には、道の曲線に沿って円形状に建てられているものもある。ハムステッドで見られたのは、円の中央スペースを共有、もしくは個人の中庭として使用しているケースであった。これは、日本ではなかなか見ることができない形である。
住宅沿いの道路には、多くの車が路上駐車してあった。ガレージを設けていない家が多く、住人の車だけで路肩は埋め尽くされていたが、道幅は広く通行に大きな支障をきたしていなかった。また、ロンドンの中心市街地と比較して特徴的なのが、タバコやガムなどで道が汚れていなかったことである。もう一つの特徴として、住宅地の中には大きな教会があり、カトリックとプロテスタントと異なる2つの宗派が隣接して建てられていたことも挙げられる。
今回のフィードワークを通して感じたことは、日本とイギリスの住宅地の違いである。前学期の授業で、横浜の高級住宅地である山手を散策する機会があり、どちらの住宅地も日本と変わらず、木花などが植えられ静かで落ち着いた雰囲気を肌で感じた。その一方で、ハムステッドの住宅地には造りや壁の色などに統一感があり、加え住宅が敷地の奥に建てられていることもあり、住民の私生活は路上から遠く離されていたのが印象的であった。
今回のフィールドワークを通して、日本とイギリスの住宅の相違などを知ることができ、とても貴重な経験となった。実際に自分の足で歩くことによってその地で暮らす人びとの生活を垣間見ることは、百聞は一見に如かずといわれるように、その地を知るためには重要なことである。そして、フィールドワークは私たちのイメージと実際との相違を発見する上において有効な手段なのだと思う。