フィリピンSV

ホームステイ in Marikina

白木智洋
人間文化課程 2年

移動用のバンを降りて進んだ道はとても狭く、滑りやすい。しかしその先に秘密基地でもあるかのような独特の高揚感を覚えせるものであった。最初に僕たちを迎えてくれたのは小ヶ谷先生が学生時代にお世話になったというファミリーだ。そこでの昼食は今でも鮮明に覚えている。「ラウンド2はどう?」と声をかけられるままにおかわりをした。小ヶ谷先生から最高に美味しいよ、と聞いていたとおり、いやそれ以上に美味しかった。そしてしばらく休憩したあと僕たちは、小さな広場に向かった。そこではたくさんの子供に迎えられた。とにかくフィリピンにはたくさんの子供がいる。ここが日本との一番大きな違いかもしれない。最初こそ、少し距離感があったもののすぐに打ち解け僕たちは子供達とこれでもかというくらい遊んだ。

ひと思いに自由に遊んだあと、僕たちは子供達といくつかのフィリピンゲームをした。フィリピンではどこに行っても最初のお互いの関係作り、またコミュニケーションが取れやすいようにとゲームをすることが多いようだ。そしてそのバリュエーションにも驚かされる。先生の話によると、昨年と同じ内容のゲームは1種類しかなかったようだ。こうして数種類のゲームを通じて僕らはコミュニケーションを重ねた。

惜しみながら子供達と別れを告げ、夕方になり僕たちはそれぞれ今晩お世話になるファミリーの家に分かれた。ここで印象的だったのは各家庭のドアが締められることが寝るまでの間なかったということだ。その間、多くの子供が家に自由に出入りし、どの子がこの家の子供なのか最初は見分けがつかなかったほどだ。現代の日本ではこのような光景はなかなか目にできないだろう。限られたコミュニティーの中で、家族間がみなお互いを信用しているからこそ成り立っているのだろう。そして僕が行ったホストファミリーもまたとても暖かく、色々な話をした。寝る場所の事を気遣ってくれたり、ご飯はどう?と話しかけてくれたりと、僕は終始リラックスして過ごすことができた。全く見知らぬ地でここまでリラックスして一晩を過ごせることはなかなかないだろうと思った。

最後に、マリキナはフィリピンの中では裕福でもなく、またそこまで貧困ではない、いわいる「中級」階級の人々が暮らしている地域だという。しかしそこには小さい差ながらも格差を感じることが確かにあった。私が訪れたホームステイの家にはトイレがなく、またシャワーもないため、地域共用のトイレのような場所で桶に水を溜め、体を流したが別の家庭ではそれが備え付けられていた。また各家庭にある家電製品などもその小さな格差を象徴づけていた。フィリピンの国レベルで地域差による格差は問題視されている。しかしこの小さなコミュニティーの中でもそれは確実に存在していると感じた。今回のフィリピンSVは、肌で実際に感じる、という経験を今までにないほど得た。文献には限界がある、そんな事を強く感じさせられたのがこのホームステイ、またフィリピンSVだ。その場ですぐ何かができるということはなかったが、「きっかけ」として今回の経験はかけがえのないものとなった。この充実したフィリピンSVを今後、生かせるかどうかが自分にかかっていると思うと少しワクワクする。