フィリピンSV

パヤタス地区 様々な問題と向き合うということ

小林篤実
人間文化課程 2年

スタディーツアー九日目、私たちはパヤタス地区に向かった。
「これが全部ゴミ?」
パヤタス地区には、巨大なゴミ山がある。ゴミ山を実際に目にしたときの衝撃は相当なものだった。まさにゴミの“山”。自分が思っていたよりもずっとたくさんのゴミが積まれていた。車でだんだん近づいていくと、そのゴミ山の中で何人かがゴミを拾っているのが見えた。

フィリピンでは、法律でゴミを燃やすことは禁止されており、都市部のゴミはパヤタスに運ばれ、ゴミ山に積まれていく。ゴミ山の近くに住んでいる人の中には、スカベンジャーという、ゴミ山で拾ったゴミを売って生計を立てている人もいる。彼らの賃金は、都市部で働く人々の賃金とは比べ物にならないほど安い。

私たちは、パヤタスで活動しているSALTというNGO団体を訪れた。係の人に連れられ、最初に訪問したのは慰霊碑だった。2000年に起きた、台風によるゴミ山の崩落事故によって命を落とした方々の慰霊碑である。このゴミ山の雪崩によって300名以上の方がゴミに埋もれ、命を落とした。この事故を経験した女性の話も聞かせていただいたが、本当に胸が痛んだ。慰霊碑のすぐ向かいには、ゴミ山が広がっていた。

パヤタスにある子供の遊び場。奥にはゴミ山が見える。

ゴミ山崩落事故の話を聞くと、早くゴミ山を無くし別の処理方法を取り入れた方がいいと思う。しかし、ゴミ山でゴミを拾わなければ生計を立てることができない人も多くいる。単にゴミ山を無くすだけでは、パヤタスが抱える問題を解決することにはならないのだ。パヤタスには、本当に様々な問題が存在している。極度の貧困、格差、立ち退き、環境問題…。しかもこれらの問題は複雑に絡み合っている。どれか一つの側面だけを見て解決しようとしても、また別の問題が顔を出してくる。パヤタスが抱える問題を解決することはとても難しいことで、途方もないことだと思った。正直、一体どうすればよいのか、わからなくなった。

しかし、どうすべきであるかという明確な答えなんて、当然ない。簡単に答えが出たとしたら、おそらくそれは問題の一部分だけを見て考えたものにすぎないと思う。私たちは、自身の無力感を感じつつも、社会が抱える問題について問い続けること、考え続けることが大切なのではないかと思った。