2018年度のフランス・ショートビジットプログラムは、以下の日程で行われた。参加者はこれまでのフランスSVプログラムで最も多い14名であり、その内訳は、大学院都市イノベーション学府院生1名、教育人間学部人間文化課程(学部3年および4年)4名、都市科学部都市社会共生学科(学部2年生)9名であった。引率教員は彦江智弘先生と長谷川秀樹先生で、彦江先生は主にパリ、長谷川先生はコルシカ島でのプログラムを担当された。
なお、史上まれにみる大所帯であったため、パリ市内については全体行動となる統一的な活動は実施せず、学年別・グループ別にあらかじめ計画していたテーマに基づいて調査活動などを実施した。コルシカ島については下表スケジュールのとおり、統一的プログラムが実施された。
このページではさらにパリの交通についての報告を行う。分担は1のメトロ建築が濱野、2のシェアリングが金井、3のトラムが有吉である。またそれぞれに仏語要約を付け、そのチェックは過去のフランスSVに引率されたファビアン・カルパントラ先生にお願いした。
学年別・グループ別によるあらかじめ計画していた調査活動(パリ市内およびその近郊)
なお、2年生については、①パリのコルシカ人コミュニティセンター見学、②ベルシー倉庫街再開発地区見学、③モンマルトル地区およびベルヴィル地区における芸術家・アーティスト(エディット・ピアフ、ココ・シャネル、ダリダ、ルノワール等)の居住地・痕跡・記念碑散策、④オスマン大通り周辺の都市景観における百貨店(ギャラリー・ラファイエット)の位置づけについての考察、を全員で行った。
アジャクシオ市内(旧市街地およびマルシェ)の散策(17日午前)
日本コルシカ協会・コルシカ民族音楽グループMimoria Tramendataのとの交流(17日夕刻)
アジャクシオ近郊グラヴォナ渓谷でのビオ農法による農場とフェルム・オーベルジュ(現地で収穫した農畜産品のみで造った料理を提供する田舎風レストラン)見学(18日)
コルシカ・パスカル・パオリ大学人文学部・大学院LISA研究室との見学・交流
大学併設のFABLABコルテを見学しその所長ヴァニナ教授との交流
宿泊施設でのコルシカ大学在学学生との交流
パリを観光する際に、地下鉄(メトロ)を利用して各観光地へ向かうことは非常に多いが、メトロそのものの観光をすることはあまりないのではないだろうか。事実、地上の荘厳な建造物の数々と比較すれば、メトロに関連する施設は最低限で機能重視のものがほとんどで、それ自体は観光地にはなっていない。しかし、パリのメトロに関連する建造物は、実は極めて魅力的である。
画像左:Ménilmontant駅入口/画像中上:Châtelet駅。アーチ天・井白い壁面タイルをもつ駅の典型例/
画像中下:Cité駅。非常に高いアーチ天井が特徴/画像右:Arts et Métiers駅。地下鉄の駅とは思えない
パリメトロの建築を語るうえで外せないのが、エクトール・ギマールによる設計の駅出入口であろう。アールヌーボーの代表作でもあるこの建造物は、いくつかのバリエーションをもってパリ市内に点在している。我々一行が訪れたMénilmontant駅(2号線)の入り口もその一つである。このスタイルの出入り口は、地下鉄の開業がロンドンやニューヨークに大きく出遅れた背景から、どこにも見劣らない個性的な地下鉄にしたいとの思惑によりアールヌーボー調が採用されたという経緯をもつ。後年、退廃的などの批判を受けて多くが撤去されてしまったが、パリらしさを求めた市民によりいくつかの駅で再建され、現在に至る。建設当時のものが残っているのは、Abbesses駅(12号線)、Porte Dauphine駅(2号線)、Châtelet駅(1号線など)のみ。統一的なデザインのパリ市街において、小さいながらも強く存在を主張するこの出入口は非常に印象的で、メトロの存在を意識させるものとしてよく機能している。
駅の構造はどの駅もおおむね共通している。中央に上下二本の線路が並び、その両側に相対式のホームが設けられている。地表面から一定以上の深さにある駅はほぼ全てアーチ状の天井で覆われ、柱を設けずに天井全体で支える構造である。一方の地上に近い駅は、鉄骨の梁に支えられる箱型の構造となっている。単調な構造ではあるが、どちらも太い柱をホーム上に設けたり配管をむき出しにしたりせず、利便性や美観に配慮されていると思われる。
また、それらにも様々なパターンがあるのが特徴である。最も多いのが壁面を白いタイルで覆うもので、これは開業当時の形態を継承しており、まだ照明の明るさが十分でなかった頃、できるだけ周囲の光を反射させるためこのタイルが選ばれたそうだ。他に多く見られるのが側壁面を暖色系のタイルとしたもので、これは戦後になって駅構内がより明るい印象となるよう採用された。これ以外にも、白色壁面の天井を紫や緑の照明で照らしたもの、照明を隠すライトハウス、ベンチ、タイルの色調を駅ごとに合わせたもの、ホームドアを円筒状にして線路を覆っているものなどがあり、それぞれ非常に個性的である。どれも第一に視認性など機能を重視したものだが、地下空間をいかに明るく、効率的に利用するか、そして美しく魅せるか工夫が凝らされているのがとても興味深い。
このほか、いくつか特徴的な駅を訪れたので紹介する。Cité駅(4号線)は、高さのあるアーチ天井と、緑がかった丸型照明が特徴的である。駅の両側がセーヌ川であるため、駅は地下深くに設置されており、入口からホームへのアプローチは鉄骨組みが印象的な、高さのある吹き抜けであった。Arts et Métiers駅(11号線)は、構造こそ標準的ながらも、銅板で覆った壁面、天井に鎮座する大きな車輪、船の窓のような壁装飾などが特徴的だ。これは、近隣に所在する駅と同名の博物館をイメージしているそうである。
こういったメトロの建築を見ていく中で強く感じられたのは、見えるものを美しくする意識の高さである。一部には落書きが見られたり、激しく汚れている箇所もあったりしたが、設計の段階、とでもいうのだろうか、メトロを造る際の、美意識の高さが伺えたのだ。事前学習でも学んだように、古くからフランスでは建物の外観を規制して都市景観の美化に配慮してきた歴史があるが、そういった土壌があるからこそ、メトロにおいてもこういった印象を抱く設備が生まれることになったのではないかと感じる。今後は、フランスが行ってきた都市景観政策と、文化のかかわりについてもう少し知識を深めていきたい。
Quand on visite Paris, on se sert souvent du métro pour visiter les lieux touristiques. Bien sûr le transport parisien en commun n’est pas seulement le métro, cependant, le métro a des charmes merveilleux et il faut absolument le visiter.
Je vais parler de la porte de l’entrée des stations de métro, conçue par Hector Guimard. Elles ont été construites dans le style Art Nouveau. Les entrées originales ne restent qu'à Abbesses, Porte Dauphine et Châtelet. Elles sont très impressionnantes dans le magnifique paysage urbain.
Les éléments des structures de la station sont pour la plupart en commun. La station à un certain niveau de profondeur et un beau toit voûté, et la station près de la surface terrestre a une structure en forme de boîte, supporté par un cadre en acier. La plupart des stations ont des carreaux blancs brillants. Il y a d'autres modèles de style comme des carreaux de couleur chaude, qui donnent une luminosité à la station. Ce n’est pas seulement fonctionnel mais aussi beau. J'ai visité plusieurs stations uniques. Cité (ligne 4) a le plafond de la voûte avec la hauteur et l'éclairage verdâtre. Arts et Métiers (ligne 11) a le mur avec une plaque de cuivre et de grandes roues au plafond.
J'ai senti le sens esthétique des Français, élevés dans l'histoire, et qui essayent de maintenir le paysage de Paris. Je veux étudier la relation entre les politiques du paysage à Paris et la culture.
パリの美しい景観は非常に印象的だった。それと同じくらい、美しい景観に入り込む、同じデザインの大量の自転車もまた印象的であった。シェアリングサービス用の自転車であったようだ。自転車以外にもフランスでは様々なサービスが発展している。それらについて少し詳しく説明しよう。
パリの歩道では丸いフォルムの同じ自転車が何台も並んでいる光景がよく見られた。それはvelib(ヴェリブ)である。ヴェリブとは2007年からパリ市によって運営されている自転車レンタルシステムである。現在、貸し借りを行う自転車ステーション「スタシオン」の数が1,700か所以上、自転車の設置台数は23,000台以上とその規模は世界最大と言われている。利用プランは1日、1週間、1年間と幅広く、地元民はもちろん、観光客にも利用されている。元々フランスは自動車の利用が多かったため、公共交通機関と自転車を使ってもらうことでその利用を減らし、地球環境を保全することをねらいとしている。サービスが普及していることが利用者数からも確認でき、シェアリングサービス有数の成功例といえる。
パリ市内のスタシオン
電動キックボードのシェアリングサービス「Lime-S(ライムスクーター)」がフランスに取り入れられたのは2018年6月である。サービスを適用している会社Limeはアメリカの会社で、このサービスもアメリカではかなり普及しているものである。アプリとスクーターのGPSを連動させて利用する、ステーションフリー(乗り捨て自由)の仕組みになっている。ヴェリブのようには体制が整っておらず、なかなかキックボードが見つからないことが課題とされている。実際にパリの街を歩いているとき、利用者は多数見かけたが、乗り捨てられている(利用可能な状態の)キックボードは注意して見ていなかったため、ほとんど見つけられなかった。普及させていくにはヴェリブとのバランスを見つつ、台数を増やすところから始めるべきだと感じた。
実際に訪れて、街の小ささ(コンパクトさ)がパリの特徴の一つであることを再確認した。そのため、最も一般的な交通手段であるメトロの各駅間もそれほど距離が開いておらず、歩くと遠いが、メトロを使うには近いという微妙な距離感を感じることが多かった。そのような時にこのサービスが役に立つと思った。おそらくヴェリブの成功もこの微妙な距離感で困っている人の需要を満たしたことが要因の一つであるだろう。スタイリッシュな印象で観光客ウケも十分狙えるであろうLime-Sにはヴェリブに続く成功を期待したい。
日本でも定着しつつあるシェアサービスのひとつにカーシェアリングがある。カーシェアリングはフランスでも実施されていた。その中でも有名なのが「autolib(オートリブ)」である。これは世界初の公共EV(電気自動車)カーシェアリングである。ヴェリブの成功を応用しているため、仕組みはヴェリブとほとんど変わらない。貸し借りを行うステーションには充電器が設置してあり、利用後、また次の人が利用するまでの間で充電できるようになっている。このサービスもヴェリブと同様、パリ市が運営していた。マイカーの削減を目的としており、車は所有するものではなく、借りるものという意識を浸透させたいという意図が組み込まれていた。しかし、膨大な赤字を抱えてしまったために2018年7月にサービスは終了してしまった。現在、オートリブに替わるEVカーシェアリングサービスが提案されており、Renault Mobilityという名称で試験的に開始されている。オートリブの失敗を生かし、料金の見直し、ステーション型からオーバーフロー型(どこでも乗り捨てられる)への変更といった改善がなされている。シェアリングサービスの競争が激しいフランスでのシェアシステムは、日本にサービスを輸入する際の参考になると思う。
交通渋滞と地球環境はフランスだけでなく、日本、車が発達している世界各国が抱えている問題である。その問題を人々の意識などの曖昧な部分ではなく、システムという現実的なやり方で解決していこうとする姿勢は、問題解決への確実な近道を歩んでいるように感じられた。シェアリングサービス自体歴史の浅いものなので、成功したシステムは他の国のサービスにも反映されることが多い。フランスで見た光景が日本で見られる日も遠くないかもしれない。
Les beaux paysages de Paris étaient très impressionnants. Cependant, j’ai aussi été marqué par le nombre de bicyclettes, toutes de même forme, qui entraient fréquemment dans le paysage. C'était un vélo à partager.
En France, divers services de partage, tels que le service de partage de vélos "velib", le service de partage de planches électriques "Lime", le service de partage de véhicules électriques "autolib" sont développés. Tous visent à réduire les embouteillages et les problèmes environnementaux mondiaux. Après sa mise en service, son objectif a été partiellement atteint. Le succès du partage de services en France peut conduire à la résolution de problèmes à l’échelle mondiale.
私がパリの公共交通機関で最も驚いたのが、トラム(路面電車)である。なぜなら、パリのその街並みのイメージに合致する交通手段としてメトロやタクシー、自転車などは容易に思い浮かぶが、トラムは全く予想外だったからである。環境にも優しく、騒音も少ないトラム(Tramway)である。
1990年代末期から運行が始まり、交通渋滞緩和を目指すパリ市では、さらなる路線の延長を計画している。
現在、パリ交通公団RATPが運営するトラムは8路線あるが、そのうち6路線はパリ市内ではなく主にその郊外都市間を連絡するためのもので、パリ市内で完結する路線は3A線と3B線の2路線である。RATPのバス・メトロ共通乗車券(1枚約250円、10枚綴りの回数券もある)でトラムに乗車でき、また最初の乗車時から1時間以内であればバスからトラム、トラムからバスへの乗り継ぎは可能だが、トラムからメトロ、メトロからトラムへの乗り継ぎはできないので注意が必要だ。
パリ市内のトラム路線は、観光スポットがひしめくパリ中心部ではなく、ペリフェリックと呼ばれるパリ市と郊外とのほぼ境界線上を取り囲む環状高速道路のすぐ内側をこれに並行する形で敷設されているため、観光目的でトラムを利用することはあまりなく、もっぱら地元住民や通勤・通学手段としての役割が大きいのではないかと感じた。だから、パリやその街並みのイメージにトラムはしっくりこなかったのかもしれない。
Je suis un peu étonnée de trouver le tram à Paris, parce que je n’avais jamais imaginé que le tramway existe à Paris. On peut facilement imaginer le métro, le taxi et la bicyclette comme transports urbains parce qu’ils sont très connus au Japon également. Mais le tramway est très rare au Japon donc je n’avais pas pu l’imaginer.
En France, à partir des années 1990, le tramway a été révalorisé et réintroduit dans la ville comme un transport écologique et anti embouteillage. Dans la région parisienne, il y a 8 lignes de tramway, dont 6 sont pour commuter parmi des communes en banlieue. Et les 2 lignes sont à l’intérieure de la ville parisienne. Cependant les lignes parisiennes de tram existent le long du périphérique et des avenues dites Maréchaux, donc ils ne passent jamais dans les quartiers touristique très connus. Les passagers de tram ne semblent pas d’être des touristes mais des citadins, travailleurs et étudiants. Et c’est la raison pour laquelle je n’avais pas pu imaginer le tram comme le transport principal parisien.