パラグアイSV

貧困地域における国際協力の実践 
パラグアイのスラムカテウラ地区における
生活改善プロジェクト

五十嵐大地、石原佳歩、木村駿、並木優貴

① 生活改善プロジェクトが実施されるまで(五十嵐大地)

藤掛洋子教授と学生たちが国際NPO と連携し、2018年5月5日より78日間「パラグアイ都市スラムの若者たちと挑戦する生活改善プロジェクト」としてクラウドファンディングを行い、総額2,017,000円のご支援を頂きました。私はクラウドファンディングのメンバーの一人としてプロジェクト実施に向けて準備に携わりました。寄付していただいたご支援金を基にパラグアイのスラム:カテウラ地区(以下、カテウラ)で生活改善プロジェクトを実施し、2018年度渡航メンバーも現地でのプロジェクトの一部に参画、講習会等の活動を実施しました。以下、生活改善の活動を3名より報告します。

② ドラッグ予防教室・家族計画(並木優貴)

私はカテウラでの2か所の小学校においてドラッグ予防教室および性教育(家族計画)を実施しました。カテウラでは、ドラッグや性暴力などの問題が深刻であるということを聞き、この活動を実施することにしました。現地で行った授業では、あらかじめ作成したワークシートやラミネートした資料を使い、子どもたちにこれらの問題について考えてもらい、ドラッグの危険性を伝えたり、夫婦の責任ある行動について伝えたりしました。

一回の授業でどの程度子どもたちに伝わったかは定かではなく、私の準備不足もあり、子どもたちが途中で回答を放棄してしまったり、一部の子どもたちが教室を出て行ってしまったりするなど、全ての子どもたちに真剣に聞いてもらえなかったことは悔やまれます。しかし、藤掛教授はじめ、現地小学校の担任の先生や、大橋先輩に翻訳や授業のサポートをしていただき授業を行うことができました。

授業を行う中で、親から虐待を受けている生徒がいること、薬物中毒の生徒がいることが判明し、ここで取り上げたテーマは、カテウラの子どもたちの身近にある問題であることを再確認しました。授業で伝えたかった内容が、少しでも子どもたちの記憶に残り、将来、彼ら・彼女がなんらかの判断をする際に役に立つことを切に願います。

③ 音楽交流(石原佳歩)

私は、カテウラの小学校の子どもたちとピアニカを使った音楽交流を行いました。交流に使用したピアニカ20台は、川崎の支援者様より頂きました。学生や先生と協力して、ピアニカを荷物の中に入れて持って行きましたが、1台約1キロほどあることに加え、大きさもあるため、とても苦労しました。ピアニカが、子どもたちの音楽との触れ合いにつながればと思い、ピアニカの寄付に加え、音楽交流をしたいと考えました。私が小さい頃から音楽と触れ合い、たくさんのことを感じ、学んできたため、現地の子どもたちも音楽と触れ合う機会を増やしてもらいたい、また、音楽なら文化や言語の壁を超えた深い交流ができると考えたからです。しかし、実際に子どもたちに音楽を教える時には、スペイン語でわかりやすく説明しないと理解してもらえないということもあり、もどかしさを感じる場面もありました。当日は、使う音も少なく比較的簡単な「きらきら星」を、全員で練習しました。2016年度の先輩たちもこの交流を別の村で実施しており、手ごたえがあったからでもあります。

パラグアイSV2018:写真1

最初は各々が勝手に音を出してしまったりして、全くまとまりがなく、どうなることかと思いましたが、最終的にはなんとか形になったのでとても安心しました。現地の子ども達は大変元気で、ピアニカをもらえた喜びを全身で表現してくれたのが印象的でした。交流会後も、たくさんの子どもたちがピアニカを楽しそうに吹いている様子を見て、やってよかったと感じました。しかし、その反面、もらったピアニカは自分だけのものという認識を持たれてしまい、交流会が終わった後、この交流会に参加していない子どもたちにはピアニカを吹かせてあげようとしない子もいました。「みんなのものだ」と言う説明を十分にしなかったことについて反省しました。今回の交流を通し、国際協力の難しさについても考えさせられました。同時に異文化に実際に触れ合うことができ、本当に意味のある経験ができました。自分一人ではできなかったこのプロジェクトを達成させてくれた仲間や藤掛先生に感謝するとともに、自分のできることは何かをこれからも考えていきたいです。

パラグアイSV2018:写真2

④ サッカー交流(木村駿)

私が今回の渡航の中でこのサッカー交流を実施しようと思った背景と目的を2点述べます。第一に、パラグアイの都市部や農村部、またスラム地域では、今もなお非常に厳しい環境で生活している子どもたちが多くいます。そこで子どもたちを対象に、パラグアイの国民的スポーツであるサッカーを共に行い、サッカー交流を通じて子どもたちの「こころ」を育むことにつなげたいと思ったことです。第二に、私は小学校低学年の時に、約三年間パラグアイで生活をした経験があります。日本ではサッカーとは無縁の生活を送っていましたが、パラグアイで生活する中でサッカーに出会い、気付けば今に至るまで、常にサッカーと共に生活を送っています。そんなサッカーを教えてくれたパラグアイに、サッカーを通じて何か少しでも恩返しがしたいと思ったことが、このアクティビティを実施したいと思ったからです。

アクティビティの結果です。サッカーボールやユニフォームの物資提供をすることは出来たものの、子どもたちとのサッカー交流のアクティビティを予定していた日に実施することは出来ませんでした。アクティビティの実施日に、現地のパラグアイ・アスンシオンは、年に数回降ることがあるだろうかというような大変な大雨に見舞われました。アクティビティの実施はおろか、カテウラ地域に入ることすら出来ない状況でした。サッカー交流を実際に予定通りに行うことが出来なかったことは残念でした。しかし、こうした予期せぬ事態が起こるということを身を持って知るチャンスでもありました。フィールドワークや計画した活動を成功させることの難しさ、また、カテウラというスラム地域において実施することの難しさの学びは、実際にフィールドに足を運んだからこそ、得られたものであり、そうした面ではとても良い学び、経験になったと思います。

今回の渡航を振り返った時、アクティビティは実施することができませんでしたが、間違いなく机上では学ぶことのできないことを多く学び、経験できたと感じています。これは私自身にとっては大きな収穫です。

私たちの活動は以下のURLから見ることができます。
https://profile.ameba.jp/ameba/ynu-paraguayteam

ありがとうございました。

参加者一同