中国の近代は1840年の アヘン戦争以降から始まるとされる。その後、西欧列強の中国への進出を許して弱体化した清朝が、1911年の辛亥革命によって倒れると、アジアで最初の共和国である中華民国が誕生した。この二つの大きな歴史の舞台となったのが広州である。私たち広州SVでは「中国南方の歴史と現在」をテーマに、広州では「中国革命の父」と呼ばれる孫文のゆかりの地を訪ね、中国近代史の歩みを追った。そして、アヘン戦争後にポルトガルの植民地(1849〜1999)となったマカオと、イギリスの植民地(1842〜1997)となった香港を訪ね、ポストコロニアル(植民地時代後)の時代に入った両都市の新たな変化を観察した。
広州は、このように「近代中国のゆりかご」とも称され、中国の近代史上重要な位置を占めるが、同時に、グローバルな人やモノの移動の中継地としても、長い歴史を有している。広州市を含めた広東省は、福建省と並び、海外華僑の送り出し地域として有名である。広州市内や郊外には、華僑の援助をもとに建てられた、祀堂や住居、公園や大学などが各所に存在する。また、広州は古代より「海のシルクロード」の中継地として栄えてきた都市でもある。その足跡は、8世紀、唐の時代に建立されたイスラム教のモスクの存在などに垣間見ることができる。さらに近年では、海外からの移民の流入地域として、多くの外国人が集住する都市ともなっている。特にアフリカ系移民の数は2万人とも20万人とも言われ、通称「チョコレートタウン」と呼ばれるアフリカ人街が生まれている。広州SVでは、こうした人やモノの移動の歴史や、多文化共生の現状と課題を学ぶために、世界遺産にも登録されている広東省開平市の華僑の村を見学したほか、広州市内の教会やモスクの見学、アフリカ人街のフィールド調査を行った。
これら10日間にわたる、中国南方の都市での活動の記録と成果は、SV参加学生によるそれぞれの報告書に熱く語られている。ぜひご覧いただきたいと思う。
今回のSV実施にあたっては、多くの方々にご協力・ご尽力いただきました。ここに改めて、謝意を表したいと思います。ありがとうございました。