シンガポール滞在の7日目となる3月20日には、横浜国立大学OBの方が勤務する鹿島建設とJETROを訪問した。
最初に訪れた鹿島建設では、シンガポールにおける建設事情を中心にお話を伺った。シンガポールでは、政策によって建設業界の売り上げが増減するという。たとえば、カジノが完成した2008年には民間企業が発注する工事が多かったが、2012年以後は政府が発注する公共事業が多くなった。このように、シンガポールでは経済状態に応じて合理的に事業が行われているのである。
また、シンガポールに滞在していて印象的だったことがある。それは、趣向を凝らした建築物が非常に多いということだ。日本にあるビルはどれも同じように見えるが、シンガポールにある建築物はどれも特徴的で、目を引くものが多かった。それらのような複雑なデザインの建築物を作るためには、その建物の他の部分のデザインや建築方法を合理化しなければならないのだという。このお話を聞き、やはりシンガポールでは合理性が強く求められているのだと感じた。
最後に、さまざまな点において合理的なシンガポールにおいて、労働状況はどのようなものなのだろうかと疑問に思った。そこで、女性の社会進出は実際のところどのくらい進んでいるのか、ということを質問した。シンガポールでは、日本に比べて女性の社会進出が進んでおり、働いている女性の割合も多いそうだ。また、日本では結婚や妊娠をきっかけに職を離れてしまう女性は多いが、シンガポールでは出産後すぐに復職する女性がほとんどなのだという。これは、家事や育児をメイドに任せているおかげであろう。この点でもシンガポールの合理性を感じた。
鹿島建設の次にはJETROを訪れた。駅を出ると周りは高いビルだらけで、JETROの入っているビルもその中の1つだった。私たちがお話を伺った部屋も38階にあり、まずその高さに驚いた。日本人のJETRO職員の方と横浜市から出向してJETROでお仕事をしている方のお2人にお話を伺うことができた。
JETROとは日本貿易振興機構のことである。シンガポールJETROでは日本とシンガポールの貿易のサポートを行っている。実際に私が自由時間で出かけた現地のショッピングモールには日系の飲食店も並んでいたし、街の中では日系のデパートも見かけた。お話の中では、日本の飲食店の進出も多いが、シンガポーリアンは基本外食ということもあるのだろうか、飲食店の競争が激しくて店の移り変わりが早く、シンガポールに進出し成功するのは大変なのだということを聞いた。シンガポールにあった商売のやり方を日本の企業に教えるなどのサポートもしているそうだ。また、他にも観光産業のサポートについての事も伺った。神奈川に来たムスリムの方向けのガイドブックを見せてもらうと、神奈川県内のハラルフ―ドが食べられるレストランや、観光地の案内が英語で書かれていた。私たちがシンガポールにきて初めて知った料理が、私の住む神奈川県でも食べられるようになっているということははじめて知った。
お二人には他にも日本とシンガポールで働く違いについてもお話を伺うことができた。日系企業でも現地の人を採用することもあり、例えばシンガポールにはムスリムの人がいて1日5回礼拝をするし、断食をする月もある。同じ職場に違う宗教の人がいたらその人の宗教を尊重することが大切だとおっしゃっていた。
企業訪問の後には横国シンガポール同窓会の方々との交流があった。日本料理店には、現地の日系企業で働く卒業生の方が集まり、そこに私たちも合流させていただいた。それぞれ卒業生の方々の学生当時のお話や、職場でのお話などで盛り上がった。同じ大学に通っていたという縁を大切にしているというのはとても素敵なことだと思った。
今回の企業訪問では、横国OBの方が働く2つの職場でお話を伺い、同窓会にも参加させていただきとても貴重な体験になった。私の印象は、皆さんが日本人としての習慣は大切にしながらも、他の国の人たちも尊重しながら、うまく現地の生活に馴染んで意欲的に働いているというものだった。お話を聞くことでシンガポールの様々な面を知ることもできたし、実際に現地で働く方にお話を伺うことができ、海外で働くという選択肢が自分の中に広がったということがよかったと思う。お世話になったOBの皆様、本当にありがとうございました。