ロンドンSV

学校とモスクの見学(ロンドン南部バラ)

櫻井沙也香  市村花澄
人間文化課程

私たちはロンドン南部に位置するバラという地区に二日赴き、学校とモスクという多くの人が集まる場所を見学してきた。ロンドン中心部には白人が多く見受けられるのに対し、この地域には白人以外の人々が多く見受けられる地域である。

2016年3月7日(月)の午前、ロンドン南部に位置するSt. Saviour's & St. Olave's Schoolを訪問した。周りは落ち着いた住宅街だった。St. Saviour's & St. Olave's Schoolは公立の女子校。そして、日本で言うところの中高一貫校、及び進学校にあたる。

日本の学校でSt.(聖)がつくところは私立だが、こちらの学校は公立ということだった。校内に入ってすぐのところには可愛らしい制服が飾ってあった。この制服を6学年皆が身につけるわけではないようで、案内をしてくれた6年次の女の子達は私服を身にまとっていた。

ロンドンSV2015:学校とモスクの見学(ロンドン南部バラ) 写真1 ロンドンSV2015:学校とモスクの見学(ロンドン南部バラ) 写真2

私達は様々な学年の様々な授業を見学させてもらった。何より印象的だったのは人種の多様性だ。どのクラスにも黒人系を中心に様々な肌の色、目の色、髪の毛の色の生徒がいた。日本の多くの学校では見られないだろう。勉強内容は外国語や化学、美術、数学などをバランスよく学んでいるようだった。学年が上がると自分で選んだ数科目を重点的に勉強するシステムのようだ。

その他、自由に談笑や食事を出来る部屋や、はたまたお喋り禁止の学習室もあった。学校の大きさの割に図書館は小さめだったのだが、日本の学校の多くの図書館が学習室の役割も兼ねていることを考えると、こちらでは部屋によって役割を分けているのなら妥当な広さのようにも思えた。

案内してくれた学生の中には日本好きな学生もいた。日本のアニメやマンガが好きだそうだ。彼女達は日本語を勉強していて、挨拶や自己紹介等々を日本語でしてくれた。やはり、日本を良く思い、日本語を一生懸命話してもらえるととても嬉しい。と、思うと同時に、自分が外国語を話す際にも上手い下手を意識しすぎず、恥ずかしがらずに一生懸命話せば相手は聞いてくれるし、喜んでくれるのではないかと思った。彼女達にとって、日本という国に親しみを持つ・より好きになるきっかけは日本のサブカルチャーなのかも知れない。この度のSVの目的は『ロンドンのエスニックマイノリティーグループを知ること』だったが、サブカルチャーという人間文化課程の研究対象の一つの影響力・重要性を感じることとなった。

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3月9日(水)の午前、Northern lineのBorough(バラ)という駅からバスに乗って少し行ったところにあるイスラム教徒のモスクに伺った。そこは以前別の用途で使っていた建物を使用しているようで、外観は想像していたモスクとは違い、一般的な建物のようであった。しかし、いざ中に入ってみると、イスラム教独特の雰囲気が漂っており、神聖な場所であることが感じられた。

モスクに入る際、イスラム教徒ではなくても女性はスカーフで頭を覆い、髪を隠さなければならなかった。イスラム教徒の女性のような格好をするのはとても新鮮だった。初めて入るモスクに、はじめはやや緊張していたが、信者の方々がとても明るく、フレンドリーに接してくれ、その緊張もすぐにほぐれた。

そのモスクの信者は、近くにあるキリスト教会の信者と協力して、互いの教会を見学したり公園でイベントを開催したりと様々な活動を行っているという。今回は、その交流をしている教会のキリスト教信者と、イスラム教信者にお話をしていただいた。

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イスラム教とキリスト教は実は似ているところが多いそうだ。「互いの違いを探すのではなく、似ているところを探すようにしている」という話は大変興味深かった。似ている点があるということは、相手と共感できる部分があるということだ。共通点を見つけて親しみを持てると、相手を受け入れやすくなるだろう。世界では宗教間の対立や衝突が見られるが、彼らはこういった活動を通じて互いに歩み寄り、理解し合う努力を行っている。異なる宗教の人々との共生を目指しているのだ。多文化共生社会を築くには、こういった地道な努力が必要となってくるだろう。

スタジオ生の一人がキリスト教信者の方に「自分のアイデンティティーを、何をもって定めているのですか」と質問をした時の返答が印象的だった。悩まれたのか、答えるまでに少し間があったが、その返事は「信仰(Faith)かな?」だった。自分のアイデンティティーを考えるとき、親の国籍や本人が育った環境の影響力が大きいのではないかと思っていた私にとって意外な答えだった。両親の国籍が違い、さらに祖父母の国籍も違うという家系に生まれた人や、親の出身国とは全く関係のない国で育った人がいるのは海外では珍しいことではない。そういった場合、親の国籍や本人が育った環境だけでは判断できない人もいる。祖父母も両親も日本人で、さらにずっと日本で育てられた私は、自分が日本人であることを疑ったことは一度もなかったし、特に意識したこともなかったため、今回の対話を通じて、自分とは異なる環境にいる人々のアイデンティティーについて考えることができたと思う。

お話を伺った後、私たちは男女別で礼拝場へ通していただいた。イスラム教は男女別の部屋で礼拝を行うからである。部屋だけでなく、先ほど述べたように、女性はスカーフを被らなければならないなど、いくつかの点で男性とは違う扱いを受けている。これを男女差別だとは思わないが、こういった区別から、改めて女という性別を意識させられた。最後にナイジェリアの料理と紅茶やコーヒーをごちそうになった。お料理は、ジャポニカ米とは違って細長く、パラパラした食感のお米をスパイシーに仕上げたものと、骨付きチキンのソテーだった。食文化の交流は、楽しいものだ。

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現地に赴き、街を見学したりお話を聞いたりするのはとても刺激的だった。座学はもちろん大事だが、モスクの中の独特の空気など、身体全体で感じるその空気は、本の中からでは決して学べない。フィールドワークならではの醍醐味を味わうことができたと感じている。また、自分一人で旅行しただけではなかなか見られないようなイギリスの一面を見ることができ、大変有意義な時間を過ごさせていただくことができたと思う。