ロンドンSV

ロンドン大学でのプレゼン

福元成美
人間文化課程

ロンドンに到着して5日目の3月7日、ロンドン大学(London School of Economics:通称LSE)の学生に対して各グループの調査したことをプレゼンテーションした。プレゼンは今回のSVで最も重要なもので、それぞれがその重要性を理解したうえで入念な準備を行った。プレゼンは聞く相手の心に響くようなものにする必要があり、たとえ日本語でもそのようなプレゼンを行うことは難しい。さらに今回のプレゼンは「英語」で行う必要があったため、うまく伝えられるのか不安を抱えながら本番に臨んだ。

2015年秋学期の齊藤スタジオでは日本に暮らすエスニックマイノリティに関して文献を中心に学習。2015年12月末頃から、横浜市のエスニックマイノリティが多く暮らす地域を5つの班(鶴見区、横須賀市、中華街、福富町、いちょう団地)に分け2016年1月から本格的に調査を始めた。限られた時間のなかでの調査だったため、フィールド調査の対象を絞る必要があった。私はいちょう団地のグループで、いちょう団地における日本語教育を中心に調査したのだが、ロンドン出発の5日前まで調査を続けプレゼンが完成したのはLSEへ行く前日だった。LSEの学生に横浜市のエスニックマイノリティの現状を知ってほしいという思いはあったが、ぎりぎりで完成したプレゼンでどこまで伝えられるのか不安だった。LSEへ向かう電車の中では、英語の原稿を修正する者、原稿を読む者が見受けられ、皆のうまく伝えたいという思いがひしひしと伝わってきた。

LSEに到着するとすぐ準備に取り掛かり、まずはお互い軽く自己紹介をした。そんな軽い自己紹介さえ、普段英語を話さない私にとってとても難しいものに感じた。それでも自分の英語力を最大限に生かし、何とか乗り越えた。自己紹介の後、齊藤先生による日本のエスニックマイノリティに関する概要説明がありいよいよプレゼンが始まった。今年は昨年のロンドンSVと異なり小グループには分けずスクリーンにパワーポイントを映し学生全体の前でプレゼンするという形式だった。LSEの学生はわたしたちのプレゼンを真剣な眼差しで聴き、時々うなずいたりするなど、こちらがプレゼンしやすい環境を作ってくれた。プレゼン後、いくつか質問を受けたのだが聞き取れず途中齊藤先生に訳していただくという場面があり自分の英語力の低さを痛感した。さらにその質問への受け答えもうまくできているのかわからず、申し訳ない気持ちになった。それでも質問をしてくれたLSEの学生さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。

ロンドンSV2015:ロンドン大学でのプレゼン 写真1 ロンドンSV2015:ロンドン大学でのプレゼン 写真2

プレゼンの様子

私にとって今回のプレゼンはとても貴重な経験となった。発表よりも相手の存在を重視するプレゼンで、どうしたらうまく伝えられるのか考えた準備の期間は決して無駄なものではなく、今後プレゼンをする機会において必ずプラスになると思う。また、今回のプレゼンでも話したいことはわかっているのだが、それをどう英語で表現すればよいのかわからない状況が何度かあった。おそらくこれまで自分の行ってきた英語学習はインプットばかりでアウトプットを行ってこなかったからだろう。やはり使える英語にするには、学習したことを実際に使ってみることが重要なのだ。

このロンドンSVの間、私は自分が日本人だとあまり意識せずに生活していた。おそらくロンドンには様々な国籍や肌の色の人々が暮らし、どの人がどこの国の人など全く分からず意識する必要がなかったからなのだと思う。日本に暮らすエスニックマイノリティの人々は自らの「アイデンティティ」(どこの国の出身なのかなど)を確立しようとする。それは日本で暮らす中で外国人だからといって差別を受けるなどしてアイデンティティを意識せざるを得ない環境があるからだ。今後、こうした差別をなくしエスニックマイノリティの人々がロンドンで暮らす人々のようにどこの国かを意識しないで暮らしていけるような取り組みが必要だと改めて気づかされた。このように外国に行ってはじめて見えてくる日本の姿があることがわかった。今後も様々な国へ行き、様々な価値観を持った人との出会いを大切にしていきたい。