9月17日、私達はビグリア湖(Etang de Biguglia)を訪れた。ツアーにおいてコルシカ島初日であったが、さっそく私達はその自然を目の当たりにすることになったのだ。幸いその日は快晴で、湖も日差しで輝き綺麗で、風も気持ちよかった。
ビグリア湖はコルシカ島の北部に位置する。ビグリア湖と言うが、フランス語で通常「湖」を意味するlacではなく、étangが使われている。正確には「ビグリア潟」、である。潟はラグーンと言い、湾が砂州によって外海から隔てられ、湖沼化した地形のことである。といっても完全に外海から隔てられたものは殆どなく、ビグリア湖もごく狭い海峡によって外海と繋がっている。したがって塩湖と言えるだろう。「ビグリア」という呼び名は地元コルシカでのものであるが、フランス語(ビギュグリア)でもコルシカ語(ビグーヤ)でもない。コルシカ島の地名はフランス語とコルシカ語が混合したものが多く、ビグリアもその一つである。
地中海沿岸にはこのようなラグーンと湿地帯が多数みられる。かつてはマラリアの温床となっていたことからほとんど人の手が加わらなかったが、近年は開発や工業化、住宅化などにより独自の生態系が危機に晒されていることが多い。ビグリア湖もつい近年までは冬季にのみ羊の放牧がおこなわれた荒れ地でしかなかったが、空港やサッカー場の拡張、砂州の観光開発や近くの都市バスティアの郊外宅地開発など、幾つかの懸念要素がある。
ビグリア湖はその全域が自然保護区に指定されていて、上の写真のように、湖に設置された木の棒に鳥が止まる、なんとも穏やかな様子も観察できる。コルシカ島の自然を体現したような湖である。
昔から漁業も盛んだったらしく、人間の自然利用の歴史を近くのビグリア湖博物館で見ることができる。巧みに網を用いた漁業は、先人の知恵を感じさせられる。博物館と言っても比較的小さな建物で、先の漁業の歴史をはじめ、昆虫や鳥の生態、ビグリア湖の地図が展示されてある。自然保護には余念がない。以下の写真はその建物の壁であるが、そこに見られるように、しっかりと自然保護区であることが証明されていた。ちなみにここの博物館は、学生は無料で見学できる。横浜国立大学の学生証でも通じたので、最悪免許証でも押し通せるだろう。
私達が訪れた時には時期もあってか、私たちの他に人が殆どいなかった。せいぜい観光客が3,4人といったところだろうか。少々暑かったがゆっくりとした時間が流れていて、景色も素晴らしい。確かにコルシカ島には世界遺産のポルト湾を筆頭として、見どころが多くあるが、ここビグリア湖も訪れてみてはいかがだろうか。