日本食においてクリと言えば栗きんとんや栗ご飯など、クリの実をそのまま一つの食材として食すことが多い。しかしながら、コルシカにおけるクリの役割は日本のそれとは異なっている。古来よりコルシカの食文化においてクリは必要不可欠な存在であった。なぜなら平地が少ないコルシカでは小麦がほとんど栽培されておらず、その代わりにクリが主食として用いられていたからだ。コルシカにおけるクリは長期乾燥させて粉末状にし、それを小麦粉の代用としてパンを始めとする食材の元となっている。
クリの木
乾燥させたクリを粉状にするのはムリヌ(Mulinu)と呼ばれる大型の石臼で、かつては川などに設置した水車の力を利用し引いていたが、今では電動が主流だという。かつてはコルシカ島のどこの村にも必ず一つはムリヌを設置している家屋(ムリナ Mulina)があり、秋にクリを収穫したのちは、村人が共同で乾燥、弾き臼作業をしていたという。だが、今ではほとんどの水車式ムリヌは画像のように廃墟と化してしまっている。
ムリヌ
伝統食材の一つとしてカニシュトレッリ(Canistrelli)というクリの粉から作るクッキーがある。これは甘すぎない素朴な味わいで朝食のパン替わりにも用いられていたそうである。エールコルシカの飛行機の中の軽食としても出されるほどのコルシカを代表するお菓子である。
カニシュトレッリ
その他、近年ではクリを使用した食品も多く見られる。例えばクリのプリンやクリのケーキ、クリのアイスクリーム、クリのビール「ピエチュラ(Pietra)」など。
このようにコルシカの食文化においてクリは、昔は小麦の代わりに主食として使われ、今では様々なデザートや、お酒、お土産などとしても幅広く使用され、人々に親しまれている。