韓国SV

日韓両国の言語教育現場比較

柳しおん
経済学部 2年

日韓両国における言語教育

日本語・韓国語学習について、教育現場や意識の日韓の違いを知るためにアンケート調査を行った。実施日は韓国SV前の8〜9月、対象者は日本語を学習中の韓国人大学生20名と韓国語を学習中の日本人大学生17名である。

まず、「日本語、韓国語を学習しようとした理由」については、韓国人は文化への興味や将来のために学ぶという人が多く、日本人はK-POPや韓流が好きだからという人が多かった。日韓共通して、その国の文化に触れることによって言語または国自体に興味を持ったということがきっかけであった。次に、「学校、家、語学塾でそれぞれ平均して何時間言語の勉強をするか」という質問に対しては、全体的に見て日本人より韓国人の方が長時間勉強時間を取っているようであった。

グラフ1 [Korea SV2015] グラフ2 [Korea SV2015]

韓国人 日本人 ※塾に通っている人は日韓とも0人

続いて、「勉強方法」に関する質問では、日本人はテキストを使用して問題を解く人が多いのに対し、韓国人はドラマやラジオなどメディアを通して学習している人が多かった。「授業に不満はあるか」という質問に関しては、日韓ともほとんどの人が「いいえ」と答えた。「はい」と答えた理由は、日韓共通して、会話などもっと実践的な練習を行いたいからという意見があった。「習得した言語を将来どのように活かしたいか」という質問では、将来の夢や就職に活用したいという人と旅行や趣味など個人的に使っていきたいという人で分かれた。最後に、「語学を習得するために留学は必須か」という質問である。これは日韓とも意見が半分ほどに分かれた。「はい」と答えた理由は、自国で学ぶには限界がある、短時間で効率的に学ぶことができる、その国に行ってみなければ得られないものがたくさんあるなどが挙げられた。一方「いいえ」と答えた理由は、国内でも様々な方法の中から自分に合ったものを選んで学習することができるからとあった。

以上の調査結果より、両国の学習そのものに対する意識的な違いの大差はなかったが、学習理由や方法に関しては多少の差があることが分かった。

世宗大学日本語学科の授業見学を通して

世宗大学に訪問し、日本語学科の授業に少し参加させていただいた。今回見学したのは日本語の能力が比較的高い生徒20人程度の授業であった。まず授業初めに配布されたのは、雑誌「AERA」の一部と日本で実際に使われている広告で、これは先生ご自身がずっと購読していると仰っていた。これら資料を使用して学ぶことで、現代社会で使われている言葉、よりネイティブで正確な日本語、実際の日常生活に密接した言葉の言い回しなどを効果的に学ぶことができる。 授業自体は日本語と韓国語を織り交ぜて進められ、資料に基づいたテーマについての意見交換を行うものであった。 自分の意見を文章にして発することでスピーキングの練習になると同時に、日本の社会や文化についての考察も行われることになる。また、日本に留学経験があり日本語も流暢な先生が、随時難しい語彙や文について日本語と韓国語を使って説明されるため、論や理解を深めることができ、とても実践的かつ効果的な授業になっていると感じた。

写真1:世宗大学 [Korea SV2015]

世宗大学

写真2:日語日文学科の授業見学の様子 [Korea SV2015]

日語日文学科の授業見学の様子

まとめ

今回のSVを通して、韓国に行く前と大きく違う印象を抱いた。比較する際に、言語教育という分野だけでも日韓で大きな違いがあることが分かった。また、日本で調べるだけでは見えてこない部分を韓国で発見することができ充実したSVになったと思う。

世宗大学にて言語教育班の発表をする際に、意識したことがある。韓国における日本語教育は歴史的背景が大きく関わっており、その歴史の影響を語るときにはその当時の人々の気持ちに配慮しながら発表することが必要であった。それに気付けたのは、やはり独立記念館での「日本の描かれ方」を見たからである。日本で生活しているだけでは気付けない大事な考え方を学ぶことができたと思う。また、歴史的な影響を受けることで、韓国における日本語教育は変動してきたが、インタビューを通して、現代ではむしろ原発などの健康面の問題という部分が大きな影響をもたらしていることが分かった。日本語学院のMorning Edu訪問や世宗大学日本語学科の授業見学を行い、日本留学を目指す学生の姿を直接見ることで、その実情について理解を深めることができた。留学希望者は各々の目的を明確にもった留学に臨もうとしている。そのニーズを汲み取って、よりよい留学環境を整えることが必要だと感じた。日本と韓国、隣国ではあるが言語学習環境には多少の違いも見られ、同時に共通する部分も見つかった。両国の文化や歴史的背景、留学や教育現場の実態をふまえることで、よりよい共生が実現する未来を思い描いた韓国SVであった。