ニャンドゥティとは現地のグアラニー語で「蜘蛛の糸」を意味する伝統的な刺繍である。詳しくは昨年度渡航の報告をご参照ください。
(http://www.ynu-gsp.jp/gsp2014/parSV/article_parSV-06.html)
ニャンドゥティの制作風景
2013年度の渡航から開始したニャンドゥティ調査を引き継ぐ形で本年度の渡航においてもニャンドゥティ調査を行った。ニャンドゥティ製作は趣味・副業程度に人々の間で受け継がれてはいるものの、その賃金の低さから生業としている人の数は減少の一途をたどっており、パラグアイの伝統工芸という観点で現状の賃金問題は重要視せざるを得ない。
昨年の調査では、組合を介した取引と介さない取引が存在していることが明らかになり、さらに組合を介した取引を行っている人の方が貧困状態に陥っていることが分かった。主な要因としては、組合を通した取引は商品の対価が支払われるまでに時間がかかるためだと考えられる。そこで今回はニャンドゥティの組合の仕組みの解明を目的とし、市場調査を行った。
調査の結果、組合の全貌を解明することは失敗に終わってしまった。今回は組合に所属する肩を見つけることができなかったが、組合に所属するかたの連絡先を教えてもらうことができたので来年以降ぜひ組合の調査をしていきたいと考える。
今回の調査からニャンドゥティ販売において組合に属すか、属さない選択は、自分で販売することができるかできないのかという点に関わっているということが分かった。また、組合は製作者を保護する役割を担えておらず、製作者への技術伝承にお金をとっていることなどから、組合の組織づくりに問題があると考察できる。イタグア市は、ニャンドゥティ製作地としてパラグアイ全土で知られており、観光客などが多く訪れる土地であり、多くの販売所が存在する。特に組合に所属せず、家族などの少人数で店を構えていることなどから、小規模でたくさんの販売所が存在すると予測できる。また、組合に属さないことによって、柔軟に商品買い付け購入ができるため、多くの商品を扱うことができ、流行に合わせた商品買い付けをすることができる。一方、組合は製作者への支払いが2ヶ月後であったり、店が閉まっているなど、組織づくりに問題があり不信感を抱かれている。しかし、自分で販売することができない生産者は組合に頼るしかないという現実があることも分かった。
また、組合の存在は知っているが、その中身についてはあまりよく知らないという人が多く見られたため、組合そのものは知られているが、その中身はパラグアイのニャンドゥティ制作者の中でも知る人は少ないのではないかと考えられる。
昨年同様、技術伝承が危機的状況にあることもわかった。技術を引き継ぐ若者がいないだけでなく、今ある技術を引き継いで行こうという意欲も下がってきているように感じられた。その一つの原因として、高齢化があげられると考える。年を取って目が見えなくなってきてしまい、あまり細かな作業ができなくなってしまったという方もいた。今ある技術が製作者の高齢化によって消えかかっているという現実がそこには存在した。また、作ってもお金にならないため、今は買い付け販売だけを行っていて、作ることはやめてしまったという人もいた。ニャンドゥティの市場的価値が低いためそれを生業にするのは難しく、趣味程度に作っているという方もいた。
前年度の調査と比べると判明した結果は似た結果となった。これはインタビューを行った地域やお店がかぶってしまったことが原因と考えられる。渡航前の段階で前年度の渡航メンバーとの引き継ぎをもっと詳細に行うべきであった。また昨年から問題視されていた若者への技術継承の問題が解決されていないことは今年の調査を重ねることで改めて浮き彫りになったと言える。
今回の調査では目標であった組合の解明に至ることはできなかったが、次につながる情報や、技術伝承の危機的状況など今あるニャンドゥティを取り巻く問題を再確認することができた。引き続きの調査では念願の組合について解明とニャンドゥティというパラグアイの伝統工芸の伝承の問題にも取り組んでもらいたい。