パラグアイSV

(11) SVパラグアイ渡航に参加して

佐々木美桜
教育人間科学部人間文化課程

地球の反対側の、文化も気候も全く異なる地で1ヶ月過ごすということは私たち全員にとって初めての体験であり、「調査」や「学習」という目的の他に「冒険」という側面を含んでいたように思う。私はリーダーという立場で今回の渡航に参加し、1ヶ月の中でひとりひとりが多くのことを学び、影響を受けながら変わっていく様子を特に感じた。

私たちが1ヶ月間過ごす中で、特に学びとしての影響を受けたのは以下の3点である。

まず、何よりも「多くの人に助けられ、とても恵まれた1ヶ月を過ごした」ということである。日本で準備を行っている段階から多くのアレンジをしてくださっていた藤掛洋子教授を始め様々な手続きをしてくださった国際課の河内久実子さん、スペイン語を教えてくださったり安全講習を行ってくださったりしたパラグアイからの留学生であるマリアナさんや佐藤鈴木誠吾セルヒオさん、大学院生の小谷博光さんなど多くの方々の支えのもと渡航準備を行うことができていた。パラグアイに到着し多くの方々と出会う中で、「先生方の多くの尽力のおかげでこの方たちと出会うことができたんだ」と実感するとともに、行く先々で多くの方にたくさんの温かい気持ちを頂きながら安全に1ヶ月を過ごせたことは、決して当たり前のことではないと感じた。

二つ目は、ひとつ目とも関連していることだが「パラグアイという国の温かさ」である。

日本と比べると心なしか時間がゆったりと流れているように感じられ、人々もどこに行っても温かい人ばかりであった。それを特に感じたのは、農村でのとある出来事である。渡航メンバーの数人が農村に入ったものの、酷い雨により赤土道がぬかるみ村から出られなくなってしまった時に、決して裕福ではないはずの村の人々が「お腹が空いているだろう」と昼食を提供してくださったのである。非常に感激するとともに「私が逆の立場だったら同じようにできるだろうか」と考えさせられた。国際協力を学ぶために渡航した私たちであるが、このような場面からまず人間として大切にすべき多くのことを学んだように思う。

最後に、私たちは決して日本で論文を読むだけでは知ることができなかったであろう「現場の国際協力の難しさ」を学んだ。カテウラ地域の学校を訪問した際に、先生方から「パラグアイの伝統的なダンスに使用するためのドレスを買うお金を寄付してほしい」という依頼を受けた。そのドレスはパラグアイの小学校などにはあって当たり前のものであるが、カテウラのような生活が苦しい地域では買うこともできずにいるということだった。実際に子供達と触れ合い短い時間ではあったものの交流を行った私たちは、この相談を受け「支援をするべき/しなくてもよい」という2グループに分かれてしまったのである。

「支援をするべき」と考えたグループは、依頼された金額は全員で少しずつ出せば十分なものであり、また実際に自分たちの眼前にいて交流を行った人たちが困っているという状況から、今自分たちにできることはここで寄付を行うことだという意見を出した。

それに対して「支援をしなくてもよい」を考えたグループは、実際に学校で交流を行った中で、子供達が私たちと一緒に作った折り紙を投げ捨てていたり、学校に寄付しようと持ってきたボールの所有権を争って喧嘩していたりとものを大切にする様子が見受けられなかったこと、またカテウラを訪問した時点でまだ渡航の序盤であり、この先出会った人々に支援をお願いされるたび全て受けていくのもなにか違和感があるということ、そして何より今回の依頼は支援を行う際に必要である「継続性」が欠けており、学生である私たちに今後この学校をずっと支援していける保証はないのに安易に行うべきではないという意見であった。

いつものような教室での答えの出ない議論ではなく、相手がいて答えを出さなければいけない議論であること、また車で移動している数十分の間に決めなければならないという時間の制約もあり、そこで私たちは国際協力の「現場」の厳しさというものを痛感せざるを得なかった。結局私たちの議論は「支援するべきと考えたもののみ支援を行う」という結論に至ったものの、一人一人が渡航の中でおそらく初めて「私たち学生が行うことのできる支援は何なのか」ということを真剣に考えた瞬間であったように思う。

パラグアイSV2015:SVパラグアイ渡航に参加して[写真]

「国際協力には様々な選択肢があり、決して正解はない。」私たちは様々な論文や書籍からこのように学んだ。しかし私たちがパラグアイで出会ったのは「それでも答えを出さなければならない」という現実だった。渡航後に学生がひとりひとり考えることで、そのような場面に立ち会った時、私たちにできることは、私たちがどのように考え、どのように感じ、どのような理由から答えを導き出したのか、そしてそれがどのような結果をもたらしたかを周りに伝えていくことだという結論に至った。これを行うことが、今後の選択肢を増やし、また周囲の興味を獲得することにつながるからである。知識もお金もない私たち大学生が国際協力に完璧な形で携わることは非常に難しい。だからこそ、目の前のできることに全力で取り組むこと、そうして周囲の人間の興味を引きつけ、巻き込む力を持つことは私たち学生にとって非常に重要であり、国際協力に携わるために一番必要な行動なのだと強く感じた。

この1ヶ月、様々な人に出会い、様々なことを経験し、様々な気持ちを感じたことは各人の人生に非常に大きな影響を与えるとともに、国際協力に携わる人間として次のステップに踏み出すための大きな自信に繋がったように思う。