オーストリアSV

ウィーンのカフェから

町田彩美
人間文化課程2年

ウィーンと聞いて何を連想しますか。王宮、音楽、教会?おっしゃる通りです。しかし、実はこれだけではありません。ウィーンはカフェ文化発祥の地であり今なお根強くその文化が息づいています。その文化は2011年にはユネスコの無形文化遺産に指定されました。

そこで今回はカフェハウスとはウィーンで生きる人々にとってどんな場所であるのか、さらにそこから見えてくるウィーンの姿を少々紹介させていただきます。

まずお伝えしたいのはとにかくカフェの数が多いということ。歴史の長い店も多くその分特徴も多種多様です。そのため多くの市民が自分のお気に入りを見つけて常連となるのも頷けます。数の多さで言うとコーヒーの種類にも目を見張るものがありました。濃さやミルクとの比率、配合されているリキュール等によってそれぞれ名前が付けられています。マリアテレジアやフィアーカー(馬車)という名前のコーヒーもあり、そういうところに土地柄を感じますね。

日本と同じ感覚で過ごしていて感じたのはサービス面での違いです。日本だと入り口をくぐった途端、何名様ですか?お席にご案内いたします…云々となるところだがウィーンでは勝手が異なります。店員さんはあいさつ等の声掛けをしたとしても席まで案内することはありません。客が自分で好きな席に着き、合図するまではオーダーの確認に来ません。客が空けた皿やカップを下げに来ることもありません。必要以上のサービスがない代わりに急かされることもない。ここで気づいたのは店全体に流れるゆったりとした空気。一杯のコーヒーを買うと同時にその空間自体を買ったような感覚です。この感覚が私特有のものではないという証拠に多くのお客さんがとうに空になったカップを前に友人との談笑を楽しんだり、新聞に目を通したりしていました。

次に気になったのは地域による値段の違いです。リンクと呼ばれる環状道路に囲まれた内側が特にウィーンで栄える中心部です。その地域はもちろんのことリンクの外側、ギュルテルと呼ばれる場所のお店も訪れてみました。言わずもがなギュルテルに比べリンク内のカフェのメニューの方が明らかにお高め。大半のものが1ユーロ以上は差があったように思います。地域の生活レベルに比例しているのかもしれません。訪れる方の風貌や店の外装にも多少の違いが見受けられました。

余談になりますが私たちが宿泊したホテルにゲイマップなるものが置いてありました。同性愛者の方々が集う施設がまとめられている冊子です。至極当然のように美術館紹介や市内マップと並ぶそれを見て少なからず衝撃を受けました。その冊子に掲載されていたカフェの一つに足を運んでみました。昼間に訪れたため居られないほどの空気ではありませんが内装等にひしひしと明らかに他のカフェとは異なるものを感じました。何面化の壁は巨大な鏡に覆われ、その他の壁や天井は赤黒い色、天井に点在する悪魔のような絵、不思議な像に圧倒されたと言いましょうか。しかし、立地もメインストリートでこそないものの市場のすぐそばという開けたところでした。そういったことを秘するものではなくオープンにすることが許されたものだと捉えるお国柄の表れですね。

以上で終わりにさせていただきますが、カフェひとつとっても様々な新たな発見が得られるというのはとても興味深い事実でした。