グローバル世界の現場に自分の足で立ち、ことばを交わし、戸惑う。風を感じ、見慣れぬ食べ物を口にしながら、準備してきた取材計画に変更を加える。まだ自由にならない言語をつぎはぎで使いながら、横浜を訪れる提携校の学生たちと夜を徹して議論する。教育人間科学部人間文化課程を母体にするこのプログラムは、こうした体験を半年におよぶスタジオ科目で支えていくアクティヴ・ラーニングの試みだ。
2013年度は、6地域の海外提携校とのあいだで百名を超す学生を交換した。第二次世界大戦後日米史の再考をかかげてカリフォルニア大学サンタクルーズ校と協働したアメリカ班は、12月には横浜東京の基地の街をめぐり、2014年2月にはサンフランシスコを取材した。やはりフィリピン大学からの来訪チームを得たフィリピン班は、濃密な交流を重ねて、貧困、子ども、原発といったテーマを手がけた。コルシカのゆたかな地方文化にひたったフランス班は、「島」の視点から現代社会を考えた。一ヶ月ものあいだパラグアイ班が取り組んだのは、学校建設支援という事業実践型の新しい試みである。
朝鮮史スタジオを中心とした韓国班は、活動の様子を建築物のスナップ・ショットで報告してくれた。音楽都市ウィーンで調査したオーストリア班報告から垣間見えるのは、ツーリズムの現在とヨーロッパ史の底流である。
2012年度までの冊子体報告書に替えて、活動の記録とともに、ツアーの意味を検討するためのプラットフォームとしてこのウェブサイトを立ち上げた。サンフランシスコの日系人老人ホームを訪ねたときに戦後史がにわかにヒューマンな顔を見せ始める田村報告。移民やLGBTのコミュニティをどう理解するかという論議の一端は、アメリカ班の座談ページ。訪れた原発での体験を反芻しながら、バターンのまぶしい浜辺に立ち尽くした田島報告。いずれも未熟な断章ながら、学生たちの驚きや困惑と思考の跡を残している。ご批判を頂きながら、学び続けていきたい。
2013年度も、日本学生支援機構(JASSO)の留学生交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット・プログラム[SS・SV])と横浜国立大学学長裁量経費の支援を得た。記して感謝いたします。