フランスSV

コルシカ・オリーブとその搾油

佐藤 明佳
人間文化課程 1年

コルシカ島の特産品のひとつとして、オリーブがある。オリーブオイルは今日日本でもよく見かける食材であるが、それがどのようにしてオイルになるのか知っている人はほとんどいないのではないか。オリーブオイルができるまでには主に2つの段階がある。オリーブの実を生産する「オレイコール(Oléicole=オリーブ栽培農家)」と、その実を買い取って搾油しオリーブオイルを出荷する職人「ムリニエ(Moulinier)」もしくは「ムーニエ(Meunier)」と呼ばれる人たちである。いずれも「ムーラン(Moulin)」、すなわち石臼を語源とする職で、「挽き臼職人」ということになる。

今回のスタディーツアーではオリーブを搾油しオイルを製造している工場を訪れた。私たちを案内してくれたルネ・コロンバニさんは、後者の「挽き臼職人」にあたる。コルシカ島北西部バラーニュ地方で収穫されたオリーブ果実を一括して買い取り、それをオリーブオイルに搾る組合の代表者である。

コルシカ島には独自のオリーブ品種があり、一度はフランス本土の品種に取り換えられたにもかかわらず近年見直されている。

フランスにはAOCという農産物やその加工品に「地名」を付け市場で販売することを許可する制度が存在する。コルシカ島のオリーブオイルもINAO(仏国立原産地呼称研究所)により、「オリウ・ウィ・ゴルシガ(Oliu di Corsica)」のブランド名で主にフランス市場で販売されている。しかしその認証は農園(verger)単位であって、コルシカ島で栽培されているオリーブ農園だから認証されるわけではない。

「オリウ・ウィ・ゴルシガ」が認定される条件は、オリーブの品種である。コルシカ島では野生種のオリーブにかつて島を統治したジェノヴァ人が接ぎ木をしたことで地元種「サビーヌ(sabine)」が生まれた。他にも島内の地域別に独自の品種がある。一方、フランス本土ではピショリーヌ種が主流であり、コルシカ島でも地元種よりもピショリーヌ種が好まれて栽培された時期もあったが、AOCの導入をきっかけにサビーヌなど地元種への見直しが進んだ。AOCに認証されるには樹木数で指定地元種比率を2015年に40%、2020年に50%、2025年に70%を達することが義務づけられている。

AOCに認証されるためにはそれ以外にも厳しい基準を満たさなければならない。オリーブ1本あたり24mのスペースを確保し、他の樹木からは4m以上離す。そして、指定する維持管理作業(剪定、整枝、施肥、灌漑など)の義務が与えられる。収量量は1haあたりのオリーブ果実収穫量が8t以下である。収穫開始期日は知事が指定し、これを遵守しなければならない。自然落下完熟果実を使用し、緑20%以下、黒50%以上である。 搾油方法は臼(moulin)を使用し、2日間臼小屋で貯蔵した後、27度以下で搾油 する。

コロンバニさんの組合は農家ではないが、組合が生産しているオリーブオイルのパッケージや瓶にはこのAOC認証マークを貼付していることから、当然、AOCに認証されている農園から実を買い取るだけでなく、その中で品質の良いものを選ばなくてはならず、さらにコルシカ品種の特徴を生かしたオイルになるように搾らなければならない。訪問した12月はちょうど果実収穫期の初めにあたり(一般的な産地にくらべるとかなり遅め)、休みにも関わらずわざわざ搾油工程を見せて頂いた。実の一つ一つを綺麗に洗浄し、搾り、濾過する非常に多数の工程があることが分かった。機械化されていたので、私がイメージする伝統的な搾油方法であるロバに石臼を挽かせる光景は残念ながら見られなかったが、オリーブの搾油を実際に見ることができてよかった。搾りたてのオリーブオイルは辛みが強く、私たちに馴染みのあるオリーブオイルとは異なった。オリーブの搾油工程がどのようなものなのか、実際に見ることができ、良い経験になった。フランスの農産物などに関する制度は細かく設定されている。日本にはどのような制度が存在するのか興味を持った。