コルシカ島に中央部の山岳地帯に位置するPoggio-di-Venacoという町を訪れて二日目。我々は緑と茶で色づく未舗装の道路を抜け、白い壁面が特徴的な古い屋敷を訪れた。聞けばこれは19世紀ごろに活躍したというコルシカ島出身の政治家、ポッツォ・ディ・ボルゴの邸宅であったという。コルシカ島の偉人、というと多くの人はフランス皇帝ナポレオンを連想するだろうが、この屋敷の主もナポレオンに関係する人物だ。この二人の関係は非常に面白い。遠戚であり幼いころの遊び仲間でもあった二人は、最終的に真逆の道を歩んでいくこととなったのだ。
ポッツォ・ディ・ボルゴの家はナポレオンの遠戚であり、彼は当時起こっていたフランスからのコルシカ独立戦争の英雄パスカル・パオリの腹心としてコルシカ独立派の一員であった。一方、ナポレオンの父親もパオリの副官として独立戦争に参加していたのであるが、彼は貴族の地位を手に入れることと引き換えにフランス側へと寝返ったのだ。その後、フランス軍によりコルシカ島が占領されるとポッツォ・ディ・ボルゴは反ナポレオン運動の先頭に立ち活動していくこととなる。
コルシカ島滞在も残りわずかとなったところで、我々はナポレオンの生まれ故郷アジャクシオに向かった。そこではフランスの英雄としてコルシカを併合したナポレオンの像と、コルシカの英雄としてコルシカを独立させようとしたパオリの像という対照的な二つの像をどちらも目にすることができる。自分はそれらを目にしたときに、不思議とこの島で行われた歴史の流れを一瞬の内に体感することができたように感じた。