職員による原発内案内の様子
2月21日に私たちはバターン半島*4にある原子力発電所を訪れた。バターン原発はマルコス政権下の1984年に完成するものの、アキノ政権*6は付近に地震断層と活火山があることを理由に稼働を許可せず、完成から30年たった今も一度も稼働していない。そのため、私たちのような一般人でも原子炉の中まで見学することができた。
プレゼン中にまわってきたもの。
左「ウランペレット模型」、右「あなたの家庭の電気約8〜9ヶ月分」と書かれている。
原発では初めに、職員によるオリエンテーションが行われた。彼は3つの理由から原発の稼働を推進している。持続可能性(sustainable)、二酸化炭素の削減(green energy)、エネルギー供給の効率(stable supply of electricity)がそれである。同時に、バターン原発の安全性が強調されていた。バターン原発も福島原発同様海に面しているが、福島原発よりは海抜の高い場所に位置している。また、福島の発電炉が核燃料で熱した水から発生する蒸気を直接発電に使う「沸騰水型軽水炉」であるのに対して、バターンのものは核燃料で温めた水に圧力をかけ液体のまま高温(300°C)の状態に保ち、その1次系の熱湯で、その外側の2次系の水を熱して蒸気を発生させる「加圧水型軽水炉」である。こうした理由から「フクシマのような事故はバターンでは起こらない」と職員は豪語する(しかし、この「加圧水型軽水炉」はスリーマイルと同じシステムである)。
核燃料が置かれる場所
バターン原発内部見学の様子
システムも条件も異なるため、バターン原発が稼働した時に「フクシマのような事故はバターンでは起こらない」という言葉が本当かどうかは分からない。しかし、職員が語った「安全」の中に放射性廃棄物の問題は含まれていなかったことは確かである。説明がなかったので、放射性廃棄物の処理について質問すると、「それは原発内の保管庫で30年保管し、その後韓国Kori発電所に移される」との答えが返ってきた。しかし、放射性物質の半減期である10万年後まで見据えた保管方法に関しては、そもそも10万年という数字が彼にとって想定外だったようだ。最終的には、「放射性廃棄物の管理については私の仕事ではない」と言われてしまった。
彼には立場的に語れないこともあるだろう。しかし、自ら考えることなく原発という大きなシステムに組み込まれるだけでは、ナチスのアイヒマンとなんら変わらないのではないか。そして大惨事が起ころうと自分自身の責任に気づくことが出来ないだろう。