お母さん手作りのおいしいフィリピン料理
ホームステイ先の子供たちと遊ぶ様子
僕たちがお世話になったホームステイ先はケソン市*9から少し離れたマリキナ市*10で、そのなかでも簡素な住宅が密集した落ち着いた雰囲気の場所であった。バンから降りると、まずはたくさんの子供たちからのお出迎え。手作りのおいしいフィリピン料理をふるまっていただいたのち、さっそくマリキナの子供たちが用意してくれたレクリエーションで交流が始まった。不思議なことに、当初疲れがたまっていた自分はどこへやら、いつのまにか子供たちと一緒にはしゃいでいた。大学生にもなってといった、そんなくだらない恥ずかしさを忘れて夢中になって遊ぶことのできた、純粋な童心に戻った瞬間であった。
ホームステイ先での夕食は、フォークとスプーンが用意されており、典型的なフィリピンスタイルであった。しかしホストマザーからフィリピンにも手で料理を食べる習慣があるんだよといわれ、僕は早速試してみた。ご飯をつぶすようにしておかずと一緒に食べるのである。食事を手で食べるのは人生初であり、なかなか難しかったが、それほど悪い気はしなかった。よくよく考えてみたら、手で食べた方が楽な料理はいくらでもある。シャワーはお湯が出ないため、温めた水をまぜて体にかけるという形をとった。日本で決して不足することのない水を何も考えずに無駄遣いしていた自分を思うと、便利なことが全てじゃないということを改めて肌で実感した。
フィリピンでのホームステイで、三つ印象に残ったことがある。一つ目は格差が顕著にみられた点である。その地域だけでも家屋の内装には大きな違いがみられ、より裕福な家庭ほど川の氾濫の影響を受けにくい高いところに立地している現状がある。たった数百メートルの間に、すでに格差が生じていた。二つ目は、子どもたちが非常に元気なことである。確かに痩せている子は多く見られたものの、どの子も元気いっぱいで、とにかく人とじゃれることに慣れているという印象を受けた。三つ目は、人と人とのつながり、とくに血縁のつながりが強かった。親戚がすぐご近所にいるからというのもあるだろうが、お互いがその地域の子供たちを大切にし、また困っている者への手助けを惜しまない。赤の他人である僕たちへのもてなしも、まさに至れり尽くせりであった。
後の二点については、なかなか日本に住んでいては感じることができないのではないだろうか。たった一泊二日の中で、人の温かさというものを僕は強く感じた。日本とは違った土地柄や風土が、このようなフィリピン人の国民性を育んでいるのだろう。ホストマザーやマリキナの人々に、また会いに行きたい。