フィリピンSV

私たちの未来を守ること

村上裕香
国際共生社会課程

2014年2月19日、ロラズハウス*21に向かう車の中は緊張感が漂っていた。「私たちの先祖が犯した罪」を直接聞きに行くからだろう。私がロラたちに会うのは二度目だった。一度目は2012年8月。初めてロラの話を聞き、胸が痛くなった経験は今でも忘れられない。

そして二度目のフィリピンスタディツアーでの訪問。今回もロラたちの日本軍によるレイプや暴力の体験を聞き、この問題について深く考えさせられた。しかし、その中で最もショックだったことは、一度目に話を聞いたロラが昨年亡くなっていたことだった。ロラたちは皆90歳近くだ。その中で実際体験を話すことのできるロラは現在8人である。ロラたちは直ちに日本政府が謝罪し自分たちの存在を認めることを求めているが、この状態でこれから先も彼女たちは正義を勝ち取ることができるのか。私はこの状況を知って、ロラたちが皆亡くなってしまった場合を考えざるを得なかった。誰がこの体験を引き継ぎ誰が彼女たちへの正義を勝ち取る活動をするのか。そして私たちには何ができるのか。

話を聞いている中でその一つの答えとなる心に深く残る言葉があった。それは事務局のリッチーさんの言葉である。

「 GUARD YOUR OWN FUTURE 」(自分自身の未来を守りなさい)

そうすることが、ロラたちを守ることにも繋がるという。現政権による靖国参拝や憲法9条改正案等の動きから、日本が「軍事化」しているのが分かる。すなわち、私たちの未来に戦争が起こる可能性が高まる。これはフィリピンへも影響を及ぼし、ロラたちの正義への道のりも遠くさせるだろう。これを考えての言葉であり、憲法第9条を守るために政治に関わって行かねばならない、と私に強く決意させた。

またもちろん戦争になれば、また同じ「従軍慰安婦問題」が繰り返されるに違いない。つまりこれはフィリピンのロラたちだけの問題ではない。女性全体の問題であり、ロラたちの正義の実現は、女性たちみんなのそれなのである。

私たちはこの問題に対して、「私たちの先祖が犯した罪」という理解だけでなく、「私たちの生活にも関わる問題」という要素を含んでいることを理解して追い続けなければならない。この理解が私たちを守り、ロラたちを守ることに繋がるだろう。

注釈
  • *21 ロラズハウス ロラズハウスは戦時中に日本軍の従軍慰安婦だったという経験を持つロラ(タガログ語、「おばあさん」の意)たちが集まる団体。正義を勝ち取るとめに、ロラたちのエンパワーメントや本人を含む家族の問題への理解促進、一時的なシェルター、そしてもちろん日本政府への抗議等を行っている。